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ニュース・コラム

Dr.Tのオンラインクリニック

■Vol.11 肉離れ

さあ春シーズンです。
走りこみの季節です。こんな時に注意しなければいけないのが「肉離れ」。今回は肉離れとはいかなるものか、予防方法、もしなってしまった時の対処方法についてのお話です。

肉離れとは?

筋肉が激しく収縮した時に、筋肉の繊維(筋繊維)や筋肉を包んでいる筋周膜の一部が損傷してしまう状態を言います。主に二関節筋(二つの関節をまたがっている筋肉)でよく起こります。ラグビーではハムストリング(モモ裏の筋肉)と腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)でよく起こりますが、一般的にはハムストリング、大腿四頭筋(モモ前)、腓腹筋の順に多いと言われています。
ダッシュやジャンプなどの急激な動作で突然痛みを感じ、走ったり、ジャンプすることが出来なくなることが特徴です。
症状によって、I度(軽症)からIII度(重症=筋断裂)まで3つに分けることができます。

I度 (軽症)  復帰まで約3週

筋線維・筋周膜には変化無く、筋肉間損傷が主体
 患部に軽い圧痛がある。
 陥凹は無し。
 歩行は可能だが、ランニング・ジャンプで痛みを自覚。

II度 (中等度) 復帰まで約6週

筋線維・筋周膜の一部の損傷
 患部に圧痛がある。
 多くの場合は陥凹がある。
 歩行困難、ランニング不能。

III度 (重症)

筋肉の部分断裂、受傷を繰り返すことにより発症
 強い圧痛を認める。
 陥凹があり、内出血を認める。
 歩行不能。

良く見られる「バナレ気味」と言われる筋肉の違和感は、肉離れではありません。ただし、筋肉に何らかのストレスがかかっているため、十分なストレッチや圧迫などのケアをする必要があります。

現場でできる処置

RICE処置に限ります。RICE処置を行うことかどうかで治る経過に大きな違いが見られます。(Vol.2,3参照)

常々言っていますが、怪我は未然に防ぐものです。結果には必ず原因があります。
肉離れの原因は…?

(1)筋肉の疲労
(2)筋肉の柔軟性の低下
(3)筋力の低下、前後・左右の筋のバランス不良
(4)悪いランニングフォーム
(5)急激な運動(ウォーミングアップ不足)
(6)練習内容
(7)サーフェイス(練習環境)
(8)気候(気温・湿度など)

再発予防

・柔軟性の改善(ストレッチ)
・筋力・筋持久力・筋バランスの改善
・ランニングフォームの矯正
・十分なウォーミングアップ・クーリングダウン
・コンディショニング調整(疲労・運動量)
・寒冷下での運動を避ける

予防方法

1.ストレッチ

ストレッチは怪我の予防にもっとも簡単で効果的な方法です。運動の前後には必ず実施するよう心がけましょう。

ハムストリング(パートナーストレッチ)

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ハムストリング(一人の場合)

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モモ前のストレッチ

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下腿(ふくらはぎ)

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アキレス腱

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2.交代浴(Vol.3参照)

3.ホットパック

元サントリーサンゴリアストレーナーの皆川彰氏が考えられた、紙おむつを使った簡便なホットパックの作り方を紹介します。
ホットパックは身体の一部の温度を局所的に温め、血行の改善のために行う物理療法のひとつで、肉離れのリハビリや予防に際して、筋肉の筋温を上昇させ血管拡張を促進させることにより、循環が増加し、筋肉に柔軟性が得られるだけでなく、腱、靱帯、関節包など他の筋肉を収縮させる組織の柔軟性も促進させる効果があります

用意する物:

紙おむつ(周囲にゴムの入っていないもの)、大きなタオル、お湯。


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(1)

紙おむつを三つ折りにし、一つの面だけをお湯で濡らす。

 

(2)

それをタオルでくるむ(暖かさの調節はタオルを折り重ねた枚数で調節する)


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(3)

それを筋肉に張りがある所や違和感のところにあてる。


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(4)

温める時間は15〜20分、火傷をしないように十分に注意する。

 

4.尻上がりの矯正

ハムストリングのトレーニングである、レッグカールの際お尻が上がる選手を良く見かけますが、これを尻上がり現象と言います。


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正しくハムストリングが使えずに,お尻の筋肉で膝を曲げており、このような状態でトレーニングをしても、ハムストリングの強化にはなりません。まずはこの矯正を行いましょう。軽い抵抗の状態から意識してトレーニングを行ってください。
また、立った状態でチューブを用いての強化も有効です。

正しいレッグカール(徒手抵抗)

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正しいレッグカール(チューブ)

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リハビリ

万が一肉離れをしてしまったら・・・
以下は肉離れ(機銑凝拂度)のリハビリテーションプログラムの概要です。
万が一肉離れを起こしてしまった時は参考にしてみて下さい。

(1)

受傷〜2日間
受傷してから2日間は急性期と言われる腫れが出現する期間なので、繰り返しアイシングと圧迫を行い安静に過ごしましょう。日常生活の動作においても痛みが感じられます。

(2)

受傷3日目〜1週間 (自発痛の消失)

安静時の痛みが取れたらウォーキング・エアロバイク開始。
患部静的ストレッチを開始。(反動をつけずにゆっくりと伸ばす。)
等尺性収縮による患部の筋肉のトレーニング(ハムストリングの場合、SLR・Quad setting)
SLR(仰向けに寝て、股関節を上げる、そして10秒キープ。これを繰り返す


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Quad setting(膝の下に座布団などを置き、少し曲げた状態から伸ばしながら、膝を床に押し付ける)


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(3)

1〜2週間 (圧痛・動作時痛の消失)

ジョギング開始。
(痛みを伴う場合は中止)
患部のトレーニング開始
ハムストリングの場合(SLR・Leg curl・Leg extention・Hip Lift)
SLR・Leg curl・Leg extentionは自重で簡単にできるようになったら、チューブを使って負荷をつけておこなう。

腓腹筋の場合(Cuff raise)


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(4)

3〜4週 (ストレッチング痛消失)
ランニング開始、徐々にスピードアップ(80%位まで)

(5)

4週間以降  (抵抗時運動時痛の消失)
トップスピード。
同時にダッシュ&ストップなど急激な動作を開始。
コンタクトの開始。
再発予防のためのリハビリテーション。

(6)

復帰
すべての動作にて痛み無し、再発無し。
復帰条件のクリア。

リハビリテーションの後には必ずアイシングを行うようにしましょう。

受傷後3日目以降のリハビリテーションを行う前はホットパックなどを行い、患部を温めてから行いましょう。

全てリハビリテーションには痛みが伴ってはいけません。痛みがある際はレベルダウンしてください。

リハビリテーションの後には必ずアイシングを行うようにしましょう。

参考文献

1.

三木英之 ランニング障害:肉離れ.日本臨床スポーツ医学会

2.

蒲田和芳 肉離れの評価とリハビリテーション.臨床スポーツ医学17(6)

■Dr.Tとは・・・?
この企画の監修を務めるドクター。某W大学ラグビー部で長年チームドクターを務める。日本体育協会公認スポーツドクターでもある。外見はプロップコーチだが実は名医。そう、見掛けによらず、ものすごく器用。縫合なんて超芸術品。そして、何よりも注射をすることをこよなく愛するが、注射をされることは大嫌いなもうすぐ二回目の成人式。未だ独身。

■ワセダメディカルチームとは・・・?
チームドクターであるDr.Tを中心に鍼灸師のプロのトレーナー1人、リハビリ担当のPT(理学療法士)2人、学生トレーナー6人から成るチーム。いつも選手の一番そばにいて、サポートを行なっているスタッフたちです。

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お問い合わせ先 rugbycolum@wasedaclub.com