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ニュース・コラム

Dr.Tのオンラインクリニック

ラグビー選手にとって、頻繁に起こる怪我について、その対処方法とリハビリ・スケジュール等について、シリーズでお届けします。

■Vol.03 外傷の初期治療と方法−2 RICE 

 外傷の初期治療と方法の2回目、今回はRICE処置についてお送りします。
 ご存知の方も多いとは思いますが、怪我をした際の応急処置の基本です。

R(Rest) 安静

 怪我をしたら、直ちに練習や試合を中断して患部の安静を保ちましょう。受傷直後の安静は腫れや炎症を抑え出血を最小限にする効果があります。また、必要に応じて固定も重要です。無理してプレーを続行し悪化させることもあるので気をつけてください。
固定には副木や固定用の装具を用いますが、手元にない場合は木の枝やダンボールでも可能です。必要に応じて松葉杖や三角巾を併用してください。

I(Icing) 冷却

 直ちに患部を冷やしましょう。冷やすことによって腫れや痛みを抑えます。怪我をすると内出血により腫れが出現します。できるだけ腫れが出始める前に冷やし始めることが大事です。

C(Compression) 圧迫

 圧迫には内出血や腫れを押さえ、回復を早くする効果があります。
ただし圧迫が強すぎると組織の壊死などを起こす可能性があるので注意してください。

E(Elevation) 挙上

 患部を心臓より高く上げることにより、患部に流れ込む血液やリンパの流れを抑え、重力により余分な体液を排出し、腫れを最小限にとどめます。
腕や手の場合は三角巾を用い、下肢の場合は箱や枕に乗せてください。

以下、代表的なRICEの方法を紹介します。

<方法1>―足関節捻挫

準備する物


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患部の中心(痛みのあるところの中心)にアイスパック(袋に氷に入れたもの)をあてます。


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弾性包帯でそのアイスパックを固定しながら、足先から心臓の方向へ圧迫をかけていきます。強すぎず、弱すぎず行ないます。ポイントとしては弾性包帯を少し引っ張りながら行なうとちょうど良い強さでまけると思います。


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患部を心臓よりも高い位置に上げます。


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RICE処置が終わったら、写真のようなU字型のパッド(U字パッド)をあて、弾性包帯で圧迫します。この処置はくるぶしの周りが腫れるのを抑える効果があります。この際冷シップ薬を併用するとさらに効果的です。


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<方法2>−大腿四頭筋打撲

ラグビーでよく起こる大腿四頭筋打撲、俗に言うモモカン・膝カンのRICEの方法です。

準備する物


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患部の中心(痛みのあるところの中心)にアイスパック(袋に氷に入れたもの)あてます。


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弾性包帯でそのアイスパックを固定しながら、圧迫をかけていきます。この時、必ず膝を曲げて行ないましょう。こうすると大腿四頭筋(もも前の筋肉)が緊張し自然に圧迫が加わるのと同時に、内出血を起こすスペースが少なくなるため膝の曲がりが悪くなることが少ないのです。受傷直後から膝を曲げておくことがとても大事で、この処置を行うかどうかで復帰時期にも大きな差が出ます。


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RICE処置が終わりシャワーをあびたら、患部を圧迫して家に帰ります。
この際もできるだけ膝を伸ばさないよう心がけてください。

<家に帰ってからの処置>

家に帰ってきたら、アイシングを15〜20分間行い、弾性包帯で患部を1〜 2時間圧迫した後、アイシングを15〜20分間行います。アイシングの時間は体格や受傷部位の皮下脂肪の厚さにより変わります。まず最初に“ジーンと痛くなり”その後“暖かい感じ”、“ぴりぴりと刺すような感じ”が出現し、最後に“感覚がなくなります”。

感覚がなくなったらアイシングを中断してください。

怪我をした日はこのサイクルを2〜4回繰り返します。 圧迫をするときに市販の冷シップ薬を貼る事も効果的です。冷シップ薬はその薬効(抗炎症作用)を期待して使用しますが、冷却効果はほとんどないので注意してください。最近の冷シップには鎮痛剤の含まれたものもあります。また、長時間の連続使用は熱を患部にこもらせてしまうのでこまめに張り替える事をおすすめします。そして環境が可能であれば、2時間ごとにアイシングをするサイクルを2〜3日間実践しましょう。受傷後数日は入浴やアルコールは控えてください。

また、寝るときは少しゆるめに圧迫をしてください。

<注意>

アイシングをする上で一番注意すべきことは凍傷です。

家庭の冷蔵庫で作られる氷、保冷剤などは0℃以下の温度になっています。0℃以下ということは凍傷を起こす危険性が高いということです。少し表面を溶かして使うか、水を少し入れてアイスパックを作るようにしてください。タオルで包んで使用するのもひとつです。製氷機で作られる氷は0℃で、表面が解けかかっており凍傷の危険性はさほどありません。

■Dr.Tとは・・・?
この企画の監修を務めるドクター。某W大学ラグビー部で長年チームドクターを務める。日本体育協会公認スポーツドクターでもある。外見はプロップコーチだが実は名医。そう、見掛けによらず、ものすごく器用。縫合なんて超芸術品。そして、何よりも注射をすることをこよなく愛するが、注射をされることは大嫌いなもうすぐ二回目の成人式。未だ独身。

■ワセダメディカルチームとは・・・?
チームドクターであるDr.Tを中心に鍼灸師のプロのトレーナー1人、リハビリ担当のPT(理学療法士)2人、学生トレーナー6人から成るチーム。いつも選手の一番そばにいて、サポートを行なっているスタッフたちです。

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お問い合わせ先 rugbycolum@wasedaclub.com