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ニュース・コラム

Dr.Tのオンラインクリニック

ラグビー選手にとって、頻繁に起こる怪我について、その対処方法とリハビリ・スケジュール等について、シリーズでお届けします。

■Vol.06 大人と子供のからだの違い

子供は小さな大人ではありません。

子供(成長期)のからだの特徴としては

1.柔らかくて未熟な骨。− 骨折の形態も大人と違います。
2.骨端線(成長軟骨)の存在。− 成長障害の危険性があります。
3.骨と筋肉の成長速度の違い。− 腰痛や膝痛の原因となります。
4.靭帯が骨より強い。− 靭帯損傷より剥離骨折が起こりやすいです。
5.柔らかくて傷つきやすい関節軟骨。− 繰り返し動作は避けましょう。

以上のような点が上げられます。
具体的な説明をします。

1.子供の骨は柔らかくて未熟です。
大人になるにつれ成長し強い(硬い)骨になります。柔らかいため折れ方も大人と違い、一部つなっがったまま折れる不全骨折が多くなります。

(1)若木骨折

若い木を折ったときのように一部つながりながら折れます。

(2)隆起骨折(竹節状骨折)

骨の外側部分が押しつぶされて、竹の節のようになります。

(3)急性塑性(そせい)性変形

骨が彎曲し変形します。レントゲンで亀裂は見えません。

(4)骨端線離開

後述

2.子供には骨端線があり、この部分を中心に骨が伸びていきます。

この部分は関節の近く(骨の端)にあり軟骨でできているため、衝撃にとても弱い部分です。一回の外傷で損傷する場合と慢性の刺激で損傷する場合(リトルリーグ肩など)があります。

このように骨端線損傷を起こすと骨の成長障害や変形を起こします。

3.小学校高学年から中学生にかけて骨は急速に伸びますが、筋肉の発育はそれについていけないため、このころの筋肉は未熟で弱く柔軟性にかけます。

そのため腰痛や膝痛を起こしやすいのです。

これらの痛みは積極的にストレッチを行うことで予防できます。

4.成長期は骨と骨をつないでいる靭帯が骨に比べると強いのです。(これは前述したように骨がむしろ弱いためです)大人ですと捻挫をすると靭帯が損傷しますが、成長期の子供では弱いほうの骨が傷ついてしまいます。

そのため足関節を捻った場合でも剥離骨折や骨折が起こりやすいのです。ですからスポーツ中の子供の捻挫は軽く考えずに、応急処置(アイシング、固定など)をした後に医療機関の受診をおすすめします。

5.関節の骨の表面は関節軟骨と軟骨に覆われています。>大人の関節軟骨は薄くて硬いのですが、子供の場合は厚く柔らかいため傷つきやすいのです。

軽い動作の繰り返しでも関節に負担がかかり炎症を起こしやすいのです。放っておくと壊死して軟骨が剥がれることもあります。これは肘と膝に起こりやすく、代表的なのは野球肘です。関節軟骨を傷つけないようにするには練習後のアイシングと同じ動作の繰り返しを避けることです。

成長期の子供に反復練習で体に覚えさせる事は避けてください。また、関節の痛みがあるときは無理せず練習を休み、早めに病院へ行ってください。

長期の怪我の多くは予防が可能です。その一番は無理をさせないことです。

日本整形外科学会では

“痛みは体が壊れかけている大事なサインである。体が未成熟な子供の『努力と根性』は禁物”

と言っています。

怪我の予防には大人も一緒ですが、特に成長期の子供には

1.痛いときには休む。
2.練習前後の十分なストレッチ。
3.繰り返しの動作を避ける。
4.練習後のアイシング。

を徹底させてください。

子供のころからセルフケア(自己管理)をさせ、怪我のないスポーツライフを志してください。子供のころの怪我が原因でスポーツを断念したり種目を変えざるを得ないと言うことだけは避けてください。

■Dr.Tとは・・・?
この企画の監修を務めるドクター。某W大学ラグビー部で長年チームドクターを務める。日本体育協会公認スポーツドクターでもある。外見はプロップコーチだが実は名医。そう、見掛けによらず、ものすごく器用。縫合なんて超芸術品。そして、何よりも注射をすることをこよなく愛するが、注射をされることは大嫌いなもうすぐ二回目の成人式。未だ独身。

■ワセダメディカルチームとは・・・?
チームドクターであるDr.Tを中心に鍼灸師のプロのトレーナー1人、リハビリ担当のPT(理学療法士)2人、学生トレーナー6人から成るチーム。いつも選手の一番そばにいて、サポートを行なっているスタッフたちです。

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お問い合わせ先 rugbycolum@wasedaclub.com