ラグビー選手にとって、頻繁に起こる怪我について、その対処方法とリハビリ・スケジュール等について、シリーズでお届けします。
前回に引き続きランニング障害について書いていきます。
前回は膝周囲のランニング障害でしたが、今回はスネに痛みが出現する、シンスプリントと下腿の疲労骨折について紹介します。
シンスプリント(過労性骨膜炎) |
シンスプリントって何?
運動時及び運動後に下腿(スネ)にある骨、脛骨(二本あるうちの太い方で内側にある骨)の内側の下1/3に慢性的な痛みが出現し、時には圧痛も見られるものです。痛みの強さは症状によって異なり、初期は運動時痛のみですがひどくなると安静時にも慢性の痛みが出現します。練習を再開したばかりのシーズンイン直後や長距離ランナーに多く見られます。
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原因は?
ランニングやジャンプ動作での繰り返し足首で地面を蹴る事(底背屈)によって、脛骨の内側に付着しているヒラメ筋(ふくらはぎの筋肉、足首を背屈させる)や長趾屈筋(足の指を曲げる筋肉)や後脛骨筋が繰り返し伸張されストレスが局所的にかかり、炎症がおきると言われています。
その他に以下のような事が原因としてあげられます。
1.トレーニング内容 |
長時間の練習 急激なランニング量・距離の増加 個人の能力を超えたランニング ランニング中の急激なスピードの変化 |
2.筋肉・腱 |
筋・腱の柔軟性の低下 (特に足首が硬く可動域の狭い場合、それだけで上にあげた筋に負担がかかり、ストレスがかかります) |
3.身体的素因 |
足部アーチの低下(扁平足)・回内足・脛骨内反 |
4.靴 |
クッションの悪い靴 磨り減った靴 |
5.路面 |
不整地・硬い路面 |
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治療方法
練習量を落としたり、練習を休むことでほとんどのシンスプリントの痛みは収まります。安静時に痛みが出現したり、パフォーマンスにかなり影響が見られる場合、疲労骨折との鑑別が必要ですので、専門医の受診を薦めます。専門医では確定診断としてレントゲン・MRI・骨シンチグラムのいずれかが行われます。
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疲労骨折 |
下腿の疲労骨折は脛骨(太い方の骨)と腓骨(細い方の骨)の両方でおこります。原因となる動作と痛みの出る場所の違いから、疾走型と跳躍型という二つのタイプに分けて専門医では診察されることが、一般的です。 ほとんどの疲労骨折は1週間程度で安静時の痛みは消えますが、運動による痛みはまだ見られるのが一般的です。また、初期はレントゲンの変化が見られず、2〜3週して変化が見られることが多いので、専門医の指示に従ってください。 原因はシンスプリントと同じようなことがあげられます。 |

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治療方法
疲労骨折を起こした場所にもよりますが、6週間程度の運動を中止し、徐々に練習量をふやしていき、2〜3ヵ月でほぼ完全に治り、試合に復帰することが可能です。
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シンスプリント・疲労骨折の予防方法 |
シンスプリント・疲労骨折は慢性障害なので十分なウォーミングアップ、ストレッチ、十分なクーリングダウン、アイシング・交代浴(Vol.3・4参照)につきます。
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治療方法
疲労骨折を起こした場所にもよりますが、6週間程度の運動を中止し、徐々に練習量をふやしていき、2〜3ヵ月でほぼ完全に治り、試合に復帰することが可能です。 また、繰り返し起こしたり、長期化する場合は、ランニングフォームの矯正や足底板の作成も有効です。 ここでは足首の柔軟性を獲得するためのストレッチを紹介します。
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ストレッチボード
ストレッチボードという便利なものがあります。これに膝を伸ばした状態で2分、膝を曲げた状態で2分のります。こうするとスネ・ふくらはぎの筋肉がストレッチされ、足首が柔らかくなります。(通信販売やドン○ホーテなどディスカウントストアーで簡単に購入できます) |

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リハビリ&患部強化方法
リハビリの基本は痛みのでない範囲での強化です。患部痛がある時は実施するのをやめ、患部の回復に努めましょう。 また、疲労骨折のリハビリは専門医の指示に従って実施してください。適切な強度でリハビリを行わないと再受傷をしてしまい、むしろリハビリがマイナスの効果となってしまいます。 |
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パワーウォーク
スネの前にある筋肉のトレーニングです。 体重を思いっきり前にかけ、踵を上げないようにすり足であるきます。足首を背屈させて歩くため、足首の可動域を広げるエクササイズでもあります。 |

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カーフレイズ
ふくらはぎの筋肉のトレーニングです。 段差に立ち、アキレス腱を伸ばすような状態になります。 そこから、背伸びをします。 膝を伸ばした状態で行うと腓腹筋、膝を曲げた状態で行うとヒラメ筋のトレーニングになります。 |

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トウレイズ
スネ前方の筋肉のトレーニングです。とりわけ足の指を伸ばす筋肉が鍛えられます。 椅子に座り、床に足を置きます。 そこから、踵を支点につま先をあげます。 |

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タオルギャザー
足の指を曲げ伸ばしする筋肉、足首を内外反させる筋肉のトレーニングです。また、足の裏のアーチを安定化させる効果もあります。 足を床に置いたタオルの上におきます。 そこから、趾(ゆび)を曲げ伸ばしして、タオルを引き寄せてきます。 |

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効果的なテーピング |
シンスプリントに効果的なキネシオテーピング紹介します。 準備するものは、5cmの幅のキネシオテープ。 |

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これを60cmぐらいの長さに切ります 足の甲の外側から巻き始めます。 |

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まずは足部のアーチをあげます。 |

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そのまま、脛骨の内側にそってテープを貼り付けて完成です。 |

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痛みが強い時は伸縮性のあるテーピングで患部を圧迫する事もあります。 |

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参考文献
1. |
「ランニング障害」日本臨床スポーツ医学会学術委員会編 福林 徹ら;106-117、2003 |
2. |
「スポーツ外傷学 IV 下肢」 黒沢 尚ら;232-235、2001 |
■Dr.Tとは・・・? この企画の監修を務めるドクター。某W大学ラグビー部で長年チームドクターを務める。日本体育協会公認スポーツドクターでもある。外見はプロップコーチだが実は名医。そう、見掛けによらず、ものすごく器用。縫合なんて超芸術品。そして、何よりも注射をすることをこよなく愛するが、注射をされることは大嫌いなもうすぐ二回目の成人式。未だ独身。
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■ワセダメディカルチームとは・・・? チームドクターであるDr.Tを中心に鍼灸師のプロのトレーナー1人、リハビリ担当のPT(理学療法士)2人、学生トレーナー6人から成るチーム。いつも選手の一番そばにいて、サポートを行なっているスタッフたちです。 |
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