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Rugby football

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Wonderful Rugby 〜もっとラグビーを楽しもう〜

ラグビーに興味があるけどあまり良く知らない、あるいはラグビーを全く知らない人に向けて、これだけは知っておきたいラグビー情報をシリーズでお届けします。

Rugby Familiarization 〜ルールと雑学でラグビーに親しむ〜

やったことのない人にはわかりづらいラグビーというゲームついて、ルール的な側面からのわかりやすい解説をコラム風にシリーズでお届けします。

■Vol.06 「オフサイドその2(キックのオフサイド)」

キックをした選手が猛然と走っていくもう一つの理由とは

 前回は、オフサイドとはどんな反則なのかという基本的な考え方について述べました。簡単に復習してみますと、“ボールより後ろが自陣でボールより前が敵陣と考え、敵陣にいるプレーヤーは敵陣から逃げ出して自陣に戻ってくるまではプレーできない(=敵の捕虜となっている戦士は逃げ戻って自軍の編隊に加わるまでは戦闘に参加できない)”、そして、“陣地の境界線は(必ずしもボールそのものの位置とは限らず)状況に応じて随時変化する”ということでした。

 さて、今回はキックのときのオフサイドについてです。ここでわざわざ「キックのオフサイド」という項目を立てているのは、このコーナーの拠り所、“ラグビーの大原則”から若干逸れるものだからです。オフサイドに関わる大原則とは、

■ボールより前(敵陣側)にいる人はプレーをしてはいけない

というものでした。

 では、具体的に見ていきましょう。
 ボールを持った選手が前方へボールを蹴ったとします。もしここで、大原則を厳格に当てはめるとすると、蹴った選手よりも前にいる人でも“蹴られたボールが自分の頭の上を越えていった瞬間にオフサイドではなくなる”ことになります。しかし、実際にはそうはなりません。ボールが蹴られた瞬間、オフサイドライン(=陣地の境界線)は蹴った選手のいる地点(を通るゴールラインと平行な線)となります。そして、この蹴った選手が動くとそれにつれてオフサイドラインも動いていくことになるのです。
図:オフサイド

 これはどういうことなのでしょうか。先回りをして、蹴られたボールをゴール前で取ってトライするというのではずるいし、おもしろくないというのがもともとの考え方ですが、例によって陣取りゲームで考えていくと、こうです。

 ボールを蹴るという行為は、ボールを獲得して攻めるという権利を一度放棄して、平等な取り合いにする行為です。平等な取り合いですから、蹴られたボールはまだどちらのものでもありません。ですから、そのボールがたとえ大きく前方へ飛んでいったとしても、その位置まで陣地を占領したとは言えないわけです。飛んでいったボールを獲得した時点で、そこまで占領したと言えるのです。

 戦闘機が空から敵陣に入り、多少の空爆を行なったとしても、陸上の前線部隊がその地にしっかりとした基盤を築いて敵を制圧しない限り、その地を占領したとは言えないのと同じです。

 戦闘機の発進地点は明らかに自陣ですが、それより前は自陣とは言えません。戦闘機に連れて地上部隊が前進することで陣地を増やしていくという発想になります。

 さて、ボールを蹴った人の位置にオフサイドラインができるということは、それより前にいる選手はすべてオフサイド、すなわち敵の捕虜となります。ラグビーの試合を見ていると、前にボールが蹴られたときに、真ん中あたりにいる選手たちが何もしないでいるのに対して、ボールを蹴った選手、あるいは蹴った選手よりも後ろにいた選手がボールの落下予想地点に向かって猛然と走り込んでいくというシーンをよく見るでしょう。「どうしてあの人たちは何もしないでただ突っ立っているんだろう」なんて思いませんでしたか? あれはボールが蹴られた瞬間、蹴った人よりも前にいる選手はすべてオフサイド=敵の捕虜だからなのです。つまり、プレーに参加しようとすると反則になるので突っ立っているか後ろに下がるかしかできないのです。

 では、ボールを蹴った人やその後ろにいた人が猛然と走り込んでいくのはなぜでしょうか。もちろん、ボール獲得のために動ける選手が蹴った人とそれより後ろにいた人だけなので、ボール獲得のために走っているという側面もあります。

 ですが、それだけではありません。先ほど書いたように、オフサイドライン(=陣地の境界線)は蹴った人の移動とともに動きます。ですから、蹴った人がどんどん前に走ることによって自陣が広がり、敵陣にいたオフサイドの選手を自陣に取りこんで(=オフサイドでなくして=オンサイドにして)捕虜を解放することができるわけです。蹴った人に追い抜かれた瞬間、その選手はプレーに参加する資格を得ますから、ボール奪取のために蹴った人といっしょに猛然と走っていくことができるようになるわけです。

 ちなみに、もし蹴った人よりも後ろにいた選手が蹴った人を追い抜いて走っていた場合、オフサイドラインは蹴った人ではなく追い抜いた人のところにできます。これは、戦闘の最前線はどこかという捉え方をすれば納得してもらえると思います。蹴った人を追い抜いた時点で、追い抜いた人のいるところが最前線と言えるからです。

これで、キックのときのオフサイドの基本を理解したことになりますが、実はキックのときにはちょっと難しいルール「10メートルオフサイド(昔の「10メートルサークルオフサイド」)というルールがあります。また、キックに限らず、敵方の行為によってオフサイドラインが消滅する(オフサイドだった選手がオンサイドになる)ケースがあるのですが、これらの話は複雑なので、ルールの基本を押さえたあとで詳述することにします。

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