ラグビーに興味があるけどあまり良く知らない、あるいはラグビーを全く知らない人に向けて、これだけは知っておきたいラグビー情報をシリーズでお届けします。
やったことのない人にはわかりづらいラグビーというゲームついて、ルール的な側面からのわかりやすい解説をコラム風にシリーズでお届けします。
■Vol.08 「密集での反則」 ラグビーは立っている人しかプレーできない 今回はラグビーでよく見られる密集での反則について解説していきます。 ラグビーが難しいと言われる理由のひとつに、密集のなかで何があったかわからないということがあるようです。長い笛が吹かれてレフェリーが何かゼスチャーをしますが、よくわからないまま、すぐにリスタートされてしまうこともよくあります。 「はて? いま、何があったんだろう?」なんて考えているうちに、試合はどんどん進んでいてゴール前では必死の攻防が繰り広げられる。そうなると「まあいいか。何かあったんだろう。過ぎたことは気にせず……おっ、行けー、行けー」などと言っているうちに忘れてしまったりします。 どんな反則だったかはレフェリーのゼスチャーでだいたいはわかりますし、最近は場内放送もしてくれます(「○○大学、ノットリリースザボールです」などと言ってくれます。けっこう違っていることも多いですが)。レフェリーのゼスチャーについては、このコーナーでも項を設けて見ていこうと思っています。 反則の名前とそれがどういう反則かというだけなら、英単語を覚えるようにがんばって覚えればいいのですが、このコラムの趣旨とはかけ離れますので、ここではまた『ラグビーの大原則』に沿って解説していくことにしましょう。 ここで出てくる大原則は、 ■地面に倒れている人はプレーをしてはいけない というものです。 正しく言えば『きちんと立っている人だけがプレーできる』ということです。つまり、片膝でもついていたり、人にもたれかかって立っている人はプレーする資格がありません。きちんと立っていない人がプレーに参加してしまうと反則となります。
前にも述べましたが、これは陣取りゲームの戦場をイメージするとわかりやすいです。タックルされたりして倒れた人は、前線で敵の攻撃を受け、傷ついた兵士です。ケガ人はケガの回復を待って戦闘に参加しなければなりません(というか、大ケガしているのだから戦闘には参加できないはずです)。ケガの回復=立ち上がると考えるわけです。 いま、前回同様、何の説明もなく「密集」という言葉を使ってしまいました。まずはこの「密集」について簡単に述べておきましょう。 今回は『モール』もしくは『ラック』を指すものとします。この密集では先ほど述べた大原則、地面に倒れている人はプレーをしてはいけないに加えて、前項まで見てきた『オフサイド』(=敵陣側にいる人はプレーをしてはいけない)が厳格に適用されます。選手たちは必死にボールを取ろうとしている上に、大原則が2つも厳格に適用されるために、反則が起こりやすくなるわけです。 では、密集で起こりやすい反則を具体的に見ていくことにしましょう。 一番多いと思われるのが前項で見た『オフサイド』でしょう。特に密集に横から入るオフサイドが多いです。 次に多いのが『ノットリリースザボール』でしょうか。これは、「ボールを持っていた選手が敵にタックルされ倒れたにもかかわらずボールを離さない」という反則です。地面に倒れている人はプレーをしてはいけないわけですから、タックルされて倒れたら、すみやかにボールを離さなければいけません。このボールの離し方、置き方は戦う上でとても重要な技術なのですが、その話はルールとは関係ありませんので、ここでは触れません。とにかく、倒れたらボールを離す。そのボールを大勢で取り合うのがラックという密集です。 ちなみにラックの中では、倒れている人は当然ですが、立っている人でもボールを手で扱うことは認められていません。手でボールを(後ろに)運んだり(=ハンド)、拾い上げたり(=ピックアップ)すると反則になります。 「でも、よく手で出しているじゃないか」と言われるかもしれません。しかし、あれはラックからボールが出てから手を使っているのです(微妙であることは認めますが)。ラックのなかから手でボールをかき出すのは反則、必ず足でかき出さなくてはいけません。 また、倒れた選手がボールの近くでいつまでも倒れたままでいてプレーの邪魔になったり、邪魔になりそうな位置に倒れ続けていたりすると『ノットロールアウェイ』という反則になります。これは地面に倒れている人はプレーをしてはいけないという大原則の応用で、実際にはプレーをしていなくても倒れて邪魔になること自体が反則という考え方です。 それから、最近はだいぶ減ってきたように思いますが、一昔前まではとても多かった反則に『オーバーザトップ』というのがあります。これは、ボールを相手に出させないように寝転んで(倒れ込んで)しまうという反則です。これも倒れている選手がプレーに影響を及ぼすのを防ぐという意味があります。 このように、難しいと言われるいろいろな反則も、一つの大原則から導かれていることがわかると思います。大原則を思い出すだけで、わかりづらいと思っていたルールも明解になりますから、ぜひ観戦の指針になさってください。 さて、大原則から導かれるルール解説はここでひとまずお休みして、次回からはラグビーに関する雑学に触れていきたいと思います。ラグビーの魅力を大いに引き出すお話にしていきますのでご期待ください。また、みなさんのラグビーに関する素朴な疑問なども募集していますので、どしどしお寄せください。お待ちしています。 |
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