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Rugby football

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Wonderful Rugby 〜もっとラグビーを楽しもう〜

ラグビーに興味があるけどあまり良く知らない、あるいはラグビーを全く知らない人に向けて、これだけは知っておきたいラグビー情報をシリーズでお届けします。

Rugby Familiarization 〜ルールと雑学でラグビーに親しむ〜

やったことのない人にはわかりづらいラグビーというゲームついて、ルール的な側面からのわかりやすい解説をコラム風にシリーズでお届けします。

■Vol.10 ラグビー雑学その2「ラグビーの起源」

 今回はラグビーの起源についてです。
 ラグビーの起源については、あまりにも有名なエピソードがあります。英国・ラグビー校のエリス少年がフットボールの試合中にボールを手でつかみ、そのまま相手ゴールめがけて走り出したというエピソードです。

 具体的に見てみましょう。
 1823年秋、英国のパブリックスクールのひとつ、ラグビー校に通う、当時16歳のウィリアム・ウェブ・エリスという少年がいました。彼はフットボールの試合中、当時のラグビー校でのフットボールのルールを無視して、地面にあるボールを手で拾い上げ、持ったままゴールへ向かって走っていきました。周りの人たちはただ呆然と立ちつくしますが、これはおもしろいということになり、ボールを手で持って運んでもいいというルール改正がなされることとなりました。

 これには少し解説がいるでしょう。当時、英国のパブリックスクールでは、それぞれ学校ごとに独自のルールでフットボールを楽しんでいました。ラグビー校のフットボールにはラグビー校独自のルールがあったわけですが、その当時のラグビー校ルールではボールを手で扱うことは一瞬だけしか認められていませんでした。ボールを手で扱った場合は、後ろに下がるか、すぐにボールを置いて他のプレーヤーに任せるか、パントキックを蹴る以外、認められていなかったのです。
 エリス少年はこのルールを無視して、手でボールを前に運んだのですが、やがてそれが公式のラグビー校ルールとして認められるようになります。これが“ラグビー校式フットボール”の起源と言われているのです。

 一部の方は「エリス少年が“サッカー”の試合中に手を使って相手ゴールにボールを運んだのがラグビーの始まり」だと勘違いしているようですが、この当時はまだサッカーという競技はありません。ちなみにサッカーという言い方は俗称で正しくは“アソシエーション(Association)式フットボール”と言います(しかも“サッカー”という名称は国際的にはごく限られた国でしか使われていません)。ばらばらだったフットボールのルールを統一しようということで1863年にアソシエーション(協会)ができ、そのアソシエーションが決めたルールに基づくフットボールという意味です。やがて、アソシエーション(Association)→アサッカー(Assoccer)→サッカー(Soccer)と略して言われるようになりました。
 早稲田大学のサッカー部の正式名称は“ア式蹴球部”です。アソシエーション式フットボールという意味です。ちなみにラグビー部は“ラ式蹴球部”、アメフト部は“米式蹴球部”です。

 ただし、このエリス少年のエピソードが事実かどうかはかなり疑問が残ると言われています。その根拠としては、エリス少年がボールを手で前に運んだという事実を客観的に証明できる証拠がないこと、そして実際にルール変更がなされたのが、このハプニングの10年前後あとであることなどがあります。
 ですが、エリス少年がラグビー校でフットボールをしていたことは間違いないですし、彼がしばしばルールを破りがちだったのも事実のようです。といっても、この手でボールを前に運ぶという反則はエリス少年だけでなく、多くの人がやっていたという説もありますし、結局のところ、ラグビーの創設者がエリス少年であるかどうかは、通説となっているが確たる証拠はないということになります。

 言えることは、ラグビー校で行われていたフットボールで、当時は反則だった手を使ってボールを前に運ぶ行為をするものがいて、その後その行為が合法とされるに至ったということです。そのルールが現在のラグビーフットボールにつながっていくことになります。

 ところで、フットボールそのものの起源はどうだったのでしょうか。前回述べたように、古代ローマでは戦場で敵の頭蓋骨を蹴り合っていたという記録もありますが、これはフットボールとは言えないかもしれません。
 中世ヨーロッパでは、何キロも離れた町と町の間で大勢の男たちがボールを取り合い、それぞれの町(敵陣)にあるゴールにボールを運べば勝ちという競技(というか、お祭りのようなものだったようですが)が流行っていたといいます(これは今日のラグビーの陣取り合戦という発想に直結します)。この競技はいつも大勢の死傷者が出たため、何度も禁止令が出されますが、まったく収まることはなかったそうです。それほど魅力的だったわけです。

 そうした魅力を引き継いで、各地で独自のルールのもと行われていたフットボール。手でボールを前に運ぶというルールに魅力を感じ、ラグビー校で整備されたラグビー校式フットボール。誰が最初かということはともかく、このラグビー校式フットボールの魅力を多くの人が認めたからこそ、現在まで存続し、人気を博しているのです。

※このコーナーではみなさんが感じている“ラグビーの素朴な疑問”を募集いたします。
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