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Wonderful Rugby 〜もっとラグビーを楽しもう〜

ラグビーに興味があるけどあまり良く知らない、あるいはラグビーを全く知らない人に向けて、これだけは知っておきたいラグビー情報をシリーズでお届けします。

Rugby Familiarization 〜ルールと雑学でラグビーに親しむ〜

やったことのない人にはわかりづらいラグビーというゲームついて、ルール的な側面からのわかりやすい解説をコラム風にシリーズでお届けします。

■Vol.14 ラグビー雑学その6 「プロップ」

 今回は「プロップ」についてです。プロップとはどういうポジションで、ゲーム観戦時、プロップの選手のどういったところを見たらいいのか、プロップの選手はどういうプレーを見てほしいのかといったことについて解説していこうと思います。なお、今回のプロップの見方については、小山義弘コーチならびに後藤禎和コーチに伺ったお話をもとに構成しています。

 プロップの仕事といえばやはり何といってもスクラム。名前(プロップ=支柱)のとおり、スクラムの柱となって活躍します。
 よくプロップの人が自虐的に「スクラムはビデオでも早送りされてしまう」などといいますが、短時間のスクラムにおいてもそこではさまざまなせめぎ合いがあります。ビデオならばなおさら早送りしないで、しっかりと見るようにしましょう。

 大前提として知っておきたいことに、左プロップ(1番)と右プロップ(3番)とでは、スクラム時の体の使い方が大きく異なるということがあります。1番のスペシャリストが、急に3番のポジションにチェンジしても、同じくらいのパフォーマンスでプレーできるとは限らない(むしろ普通はできない)のです。
 1番の場合は相手の頭は自分の右側にしかありませんが、3番は頭の両側を相手に挟まれることになります。頭の両側を挟まれるという点ではフッカー(2番)も同様ですが、2番はボールのフッキングがあったり、両プロップを支えにできたりという部分で違いがあるといいます。

 スクラムはよく相撲の立ち会いに喩えられます。相撲では立ち会いで立ちおくれたらまず勝負になりません。スクラムも同じで、相手と呼吸を合わせながらも、ぶつかる際にいかに有利な形で組めるかがたいへん重要です。こう考えると、実際に相手とぶつかる第1列の3人(両プロップとフッカー)の役割が大事なのも理解してもらえるのではないでしょうか。
 相撲の立ち会いにもさまざまな駆け引きがあるそうですが、スクラムを組むのにもいろいろと駆け引きがあるのだそうです(このあたりは企業秘密ですが)。スクラムの駆け引きがうまいプロップがいるチームは、スクラムでかなり優位に立てることになります。
 プロップは目立たないところで人の嫌がる仕事を黙々とこなす縁の下の力持ちといったイメージがあるので、「結婚するならプロップと」という言葉まであるそうです。ですが、本当に力強いプロップは、実は駆け引きもうまいのです。「結婚するならプロップと」を信じすぎて、“恋の駆け引き”に振り回されるなんてことのないように気をつけてくださいね。
「性格が良すぎる人、お人好しな人はたいてい駆け引きが苦手です。でも、それでは力強いスクラムは組めない。つまり、スクラムが強いプロップというのは、実は性格が悪いんです(笑)」(後藤コーチ)
 ちょっとプロップのイメージ、見方が変わるかもしれませんね。

 さて、プロップの仕事はスクラム以外にもたくさんあります。ラインアウトやドロップアウト、キックオフのキャッチングの際のサポート、ラックで相手をはじき飛ばす、もちろん敵の突進を止めたり、自分が突進したりという仕事もあります。
 また、人によってスタイルも違います。スクラムを低く、重く、じわじわと押し込むようなプロップもいれば、日本代表山村亮選手(関東学院−ヤマハ発動機)のような走力のあるプロップもいます。

 プロップの場合、他のポジションに比べて制約(決まったパターン)が少ないのが特徴です。つまり、フィールドプレー(セットプレーでないプレー)において「この局面でここにいて、この仕事をしなければいけない」という制約があまりないのです。
 これは、「スクラムやラックで仕事をしたら、あとは仕事をしなくても大きく責められることはない」ということにもつながります。裏を返せば、いいプロップというのは「スクラムやラックで仕事をした上に、他でも仕事をしている選手」といえそうです。

 スクラムをしっかり安定させてボールを出させ、そのあとしっかり走って、ラックで相手をはじき飛ばす。3次攻撃、4次攻撃……と進んでいった時、バックスの人数が足りなければラインに参加する。テレビの解説などで「フォワードの集まりが悪い」といった表現をよく聞きますが、プロップがよく動いていれば、こうしたコメントは出てこないといいます。

「ラグビーはFW前5人が強いチームが勝つと思っています。これはスクラムだけではありません。ラインアウト、モール、ラックといった重要なプレーにおいてこの5人の役割がとても大きいからです。強いチームのプロップはみなフランカー並みに走っています。そういう意味では、ワセダのプロップはまだまだでしょう。バックスの突破も止めるようなプロップ。そういうプロップがいるチームは強いですよ」 (後藤コーチ)

「スクラムというのは8人の集合体なので、ミスをしても原因がわかりにくいんです。ただ、ミスしたり、力を抜いたりした本人はわかっているはず。1試合20〜30回くらいスクラムを組むとして、そのすべてで全力を出せとまではいいませんが、多少疲れたくらいで抜いたプレーはしてほしくないですね」 (小山コーチ)

 プロップがいかに動いているかは、試合中、プロップの選手の動きを追いかけてみるといいでしょう。スクラムのあと、ゆっくりと歩き出し、ボールと関係ないところでうろうろしているプロップがいたら……もっと頑張るように応援してあげましょう。

※このコーナーではみなさんが感じている“ラグビーの素朴な疑問”を募集いたします。
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