WEB会員募集中



Rugby football

ニュース・コラム

Wonderful Rugby 〜もっとラグビーを楽しもう〜

ラグビーに興味があるけどあまり良く知らない、あるいはラグビーを全く知らない人に向けて、これだけは知っておきたいラグビー情報をシリーズでお届けします。

Rugby Familiarization 〜ルールと雑学でラグビーに親しむ〜

やったことのない人にはわかりづらいラグビーというゲームついて、ルール的な側面からのわかりやすい解説をコラム風にシリーズでお届けします。

■Vol.15 ラグビー雑学その7 「フッカー」

 今回は「フッカー」についてです。フッカーというポジションがどういうもので、観戦時にフッカーのどんなところに注目しながら見ればいいのかについて解説していきます。なお、今回のフッカーの見方につきましては、森島弘光コーチならびに後藤禎和コーチに伺ったお話をもとに構成しています。

 フッカーの仕事の中で特に重要なものは2つ。スクラムを安定させてしっかりとしたフッキング(スクラムハーフが入れたボールを足で掻いて後ろに送る)をしていいボールを出させることと、ラインアウトのスローワーとしていいボールを入れてラインアウトからの攻撃を有利に展開させることです。

 まずはスクラムについて見ていきましょう。
 フッカーはフォワード第1列の真ん中に位置していて、プロップと同様にスクラムを組む際に相手と激しくぶつかり合うポジションです。当然、プロップのように相手との駆け引きが重要になってきます。ただ、組んだ後にフッキングという重要な仕事がありますから、スクラムを安定させるという部分はできる限りプロップに頑張ってもらいたいというのが本音のようです。両プロップにはできるだけ前で相手と当たってもらって、自分は次のフッキングの仕事に集中したいのだそうです。

 もうひとつの大仕事、ラインアウトのスローインですが、実はスローワーは別にフッカーでなくてもかまいません。ルール上は誰が投げてもいいのです。ですが、現在ではどのチームもほぼ例外なくフッカーがボールを投げ入れます。
 歴史的に見ますと、その昔はウイングが投げていたり、フランカーが投げていたりしていたこともありますが、1970〜80年代にはほぼ全世界的にフッカーの仕事として定着しました。理由にはいくつかありますが、まずバックスが投げると攻撃時にラインの人数が少なくなってしまうため不利です(ハーフバックスであっても、攻撃の基点が不在となるため不利です)。第2列、第3列には大きな選手が多く、ラインアウトではキャッチャーとなる上、ボール獲得後のフォワード攻撃には欠かせない(人数が減ると不利になる、あるいはフィールドプレーにおける約束事に欠かせない)存在です。残るはフォワード第1列。彼らはフィールドプレーにおいて約束事(制約)がほとんどありませんから、ラインアウト後の攻撃に大きな影響を与えません。そこでプロップとフッカーのどちらかということになりますが、プロップにはもともと不器用な選手が多く、またフッキングを仕事とするフッカーはボールにも慣れている(もともとボールを扱う器用さが求められる)ということがあります。こうしたことから、ラインアウトのスローワーには、プロップよりもフッカーの方が適任と考えられたのです。

 このようにフッカーは、ラグビーの2大セットプレーとも言えるスクラムとラインアウトと両方において、とても重要な役目を担っています。
 「私が現役の時には、『ゲームを作るのは自分だ』と思ってやっていました。セットプレーで常にプレーの基点となるわけですから、フッカーはいわば“フォワードのスタンドオフ”なんです。同時にリーダーシップも要求されるポジションです。スクラムを組む時には真ん中にいるという点でフッカーのリードが重要ですし、スクラムブレイク(スクラム後にスクラムから離れてフィールドプレーに参加すること)が最後になりますから、その分、チームのフィールドプレー全体を冷静に見ることができるんです。ここで、的確な指示が出せるかどうか。2次攻撃以降はフッカーの視野の広さというものが重要になるんです」(森島コーチ)

 いいフッカーの条件としては、まず基本としてスクラムの安定があります。スクラムにボールが入ってフッキングをする瞬間、フッカーは片足の状態になります。その分、不安定になりやすいですし、相手はその不安定になりやすい瞬間を狙ってプレッシャーをかけようとします。そんなプレッシャーの中でもしっかりとしたフッキングができるフッカーはいいフッカーと言えます。スクラムで当たり前のようにいいボールが出たり、ダイレクトフッキングでNo.8がさっとボールを抱えていたら、フッカーがいい仕事をした証拠です。
 もっとも、スクラムでいいボールを出すというのは、フッカーひとりでできることではありません。FW8人の総合力があってはじめて、スクラムは安定し、いいボールが出てくるのです。

 また、いいフッカーはスクラムの推進役となります。普通、第1列は安定性が重視されるため、推進役として足をたくさん動かす役割はロックが担うことが多いのですが、安定力と推進力の両方を持つフッカーは要求以上の+αの仕事をしていると言えます。
 グラウンドでは見えにくいかもしれませんが、たくさん足を動かしてぐいぐいスクラムを押しているフッカーがいたら、いいフッカーとして評価してあげてください。

 もちろんラインアウトでまっすぐにボールを入れるというのは基本中の基本です。ボールキャッチはフッカーとキャッチャーとの呼吸が重要なのですべてフッカーの責任というわけではありませんが、それでもラインアウトでいいボールが出せるかどうかの多くはフッカーのスローイングにかかっています。ラインアウトが安定しているチームのフッカーが優秀なのは間違いありません。

フッカーにはバックロー(FW第3列)からポジションチェンジした選手も多いそうです。これはフッカーに第3列の仕事が要求される、あるいはフッカーが第3列の仕事をするととても有利になるという証拠でしょう。
 セットプレーを安定させて、その上FW第3列のように器用に走ったり、強さで相手を圧倒したりできるフッカーを見つけたら、ぜひスタンドから惜しみない拍手をしてあげてください。

※このコーナーではみなさんが感じている“ラグビーの素朴な疑問”を募集いたします。
ラグビーを見ていて「これがわからない」「どうしてこうなるんだろう」と思うことにワセダクラブがお答えします。

例えば「どうしてラグビーボールは楕円型なのか」「なぜゴールポストはH型をしているのか」など、普段は気にしないけれども考え始めたら夜も眠れない(?)といった疑問をメールでどしどしお寄せください。
なお、投稿が多数の場合、お答えする疑問はワセダクラブで選ばせていただきます。

お問い合わせ先 rugbycolum@wasedaclub.com