ラグビーに興味があるけどあまり良く知らない、あるいはラグビーを全く知らない人に向けて、これだけは知っておきたいラグビー情報をシリーズでお届けします。
やったことのない人にはわかりづらいラグビーというゲームついて、ルール的な側面からのわかりやすい解説をコラム風にシリーズでお届けします。
■Vol.16 ラグビー雑学その8 「ロック」
今回は「ロック」というポジションについて解説していきます。なお、今回の解説は後藤禎和コーチに伺ったお話をもとに構成しています。
「ロック」とは、別の回でもすでに述べたように「lock=錠」のことです。スクラムをしっかりとロックする役割を担っていることがわかります。スクラムの推進役として、第1列をしっかりと押すのがロックの仕事です。
ロックの選手の特徴はなんといっても"背が高い"こと。スクラムを第2列でがっちりとロックするためには背が高い方が有利であること、また、スクラムは横に広いよりも縦に長い方が有利であることが、適任の理由とされています。
背が高いという特徴は、当然ながら、空中戦(高いところにあるボールの取り合い)で活躍することになります。空中戦といえば主にラインアウトを思い浮かべると思いますが、それ以外にもキックオフのボールのキャッチやハイパントのキャッチ、ペナルティーキックのボールを追いかけるなどがあり、どのプレーもその後のゲームの流れを左右する重要なものです。
空中戦には、練習によってうまくなる部分と持って生まれたセンスに左右される部分とがあるそうです。ラインアウトのキャッチングは練習によってカバーできる部分が大きいのに対して、キックオフやハイパントのボールをキャッチするのはセンスによるところが大きく、あまり練習しなくてもうまく捕れる選手もいれば、いくら練習してもうまくならない選手もいるといいます(もちろん、ラインアウトでもセンスがあるに越したことはありません)。
キックのボールをキャッチするセンスは、野球の外野手のセンスに似ているそうです。外野手はボールの弾道を目で追いかけながら捕りにいっているのではありません。いい外野手はほぼ例外なく、バッターが打った瞬間に落下点を予測し、一目散にそこへ走っていくのです。このボールが上がった瞬間に落下点を予測する能力、これがセンスであり、センスのない人はいくら練習してもなかなかうまくならないのだそうです。
たまに、キックオフのボールを捕ろうとジャンプし、周りもサポートするものの、肝心のボールは全然違うところに落下してしまうというシーンを見ることがあります。人間ですからミスはありますし、角度によっては太陽が目に入ってしまうこともあるのですが、これが繰り返されるようだとロックとしてのキャッチングセンスを疑われてしまうことになります。
背の高さ、体の大きさは、フィールドプレーでも活かされます。ポイント付近でのサイド攻撃、セットからのサインプレー、さらにはバックスがポイントに巻き込まれた際のライン参加もあります。
「ロックといえば背が高いというイメージがあると思いますが、その中でも背が高くて体重も重いタイプと背は高いが比較的細いタイプとがいます。重いタイプは突破力、推進力が要求され、細いタイプはスクラムブレイク時等の俊敏さや先を読んで動く能力、プレーの確実性などが要求されます」(後藤コーチ)
4番が左ロック、5番が右ロックで役割的には大きな違いはありませんが、上記のように重いタイプと細いタイプがいる場合、4番に細いタイプ、5番に重いタイプを置くケースが多いようです。その理由は次の図を見ながら説明しましょう。
(図)スクラム時の前5人(数字がポジション、青丸は相手チーム)
プロップの1番と3番とを比較すると、両側に相手がいる3番の方がやや負荷が大きくなります。ロックの4番と5番も同様の理由で、5番の方が若干負荷が大きくなります。そのため、重いタイプを5番に置いた方がスクラムが安定しやすいのです。
では、ロックのプレーを見る上でのポイントはどのあたりにあるのでしょうか。
「いいロックはすべてのプレーにからむべく、先頭に立って突進していくプレーヤー。ポイントができたらすばやく参加する。キックが上がったら追いかける。サインプレーでも役割をこなす。相手を確実に止める。FW前5人がテレビ画面によく映るチームは強いですよ。ボールによくからんでいる証拠ですから。その中でも第1列は制約が少ない分、サボることができなくもないですが、ロックはやるべきことが次から次へと出てきますからサボれません。それがロックのおもしろさでもあるんですけどね。あらゆるプレーにからむとはいえ、やはりロックの魅力は空中戦。空中戦のスペシャリストであるロックと、地上戦のスペシャリストであるフランカーとを対比して見るのもおもしろいでしょう」(後藤コーチ)
センスフルに宙を舞い、ボール獲得後は怒濤の突進。蝶のように舞い、蜂のように刺すロックの活躍に注目です。
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