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Rugby football

ニュース・コラム

楕円球コラム 〜Extra〜

■プロップマガジンW
 Vol.3「清宮監督はプロップだった!?」(前編)

 今年もあっという間に3月。
「プロップマガジンW」のvol.2が昨年12月25日に更新したっきりで、そろそろやばいな、と思ったのが今年の1月25日ごろ。いい加減にやばいぞ、と思ったのが2月25日ごろ。でも、「清宮監督へのQ&A vol.1 ご挨拶」が10月24日だからまだいいのかもな、と開き直っている3月の上井草でございます。

 今回のプロップマガジンWは、その清宮克幸氏へのインタビューで、内容はもちろんプロップに関することばかりでございます。
 ですから、ラグビーをビデオで見る場合、スクラムの場面を早送りで飛ばして見るのがラグビービデオ観戦の常体でありますが、この「プロップマガジンW」は、スクラムおよびプロップのシーンを飛ばし読みしようとしてブラウザ(今これを見ているソフトのことです)をスクロール(右横にあるバーを上下させることです)すると、何も読めないことになっております。

 ひさびさの新しい号なので、ご存知ない方あるいはお忘れの方もいらっしゃるかと思って余計なことまで申し上げました。

 とすれば、ここでなにゆえ清宮氏にプロップのことをインタビューするのか。清宮氏といえば1990年の早稲田大学ラグビー部のキャプテンでありその後はサントリーラグビー部(サンゴリアス)でずっとナンバー8、あるいはフランカーであったのであって、そのお方がプロップと何の関係があるのかと。実は、清宮はプロップだったんです、というお話ですので、華々しいお話をご期待の方はどんなに画面をスクロールしてもちっとも華々しくなりませんので、あしからずというところでございます。

 では、参ります。

――清宮さんのいくつかあるラグビー信条の中に、「ラグビーはスクラムだ」というのがあるそうで、それはどういう意味なんでしょうか。

 スクラムから始まる。何にしても。

――アタックにしても、ディフェンスにしてもということでしょうか?

 いや、そういうストレートな意味もあるし(笑)、むしろ精神的な意味で、ラグビーはスクラムから始まるんです。
 スクラムが崩れると、ほかに及ぼす影響は大きくて、ゲームはメチャクチャになりますね。やっぱり、こういうことは、ほかのスポーツにはないんじゃないかな。あっても、……なんだろ。何ていえばいいかな……

――例えば、サッカーでいえばどういうことだとか、野球でいえばこういうことだとか、っていうのは?

 ないですよね、ぴったり当てはまるものというか、表現というか。アメフトのラインぐらいですかね、似ているものとしては。

――むずかしいですね

 はい。

――……バックスにもそういう「スクラムがダメならみんなダメ」みたいな感覚はあるんでしょうか?

 あるんじゃないですかね。スクラムさえ強ければ、攻めるオプションは増えますよね。しっかりボールをキープできるわけだし。

――でも失礼ながら、早稲田は伝統的にFWが弱い、つまりスクラムが弱いというイメージがあります。よく比較されるのは、明治大学でしたけど。

 だから、早明戦はいつも苦戦してたわけですよ(笑)。

――スクラムが強い年の早明戦は勝ってた?

 勝ってます(きっぱり)。
 スクラム以外のことって、工夫や努力で補えるじゃないですか。だけど、スクラムは逃げ場がないというかね、ゴール前で相手のスクラムより弱かったらどうしようもないでしょう。
 どんなに100mを10秒台で走れる選手をずらっとそろえても、スクラムが弱ければどうやったってダメだ、っていうところがラグビーにはありますからね。

――清宮さんご自身も、プロップを経験なさったと伺ってますが(笑)。

 そうなんですよ(笑)。大学2年生のときですね、2年生の春です。

――なんでプロップにまわされたんですか?

 1年生の秋にヒザの靭帯を切ったんです。それで、リハビリをあまりやらなかったのがいけないんですけど、靭帯切る前は、50mを6秒2か3くらいで走ってたんですよ。

――速い!

 うん(きっぱり)。
 それで靭帯切ってから走ったら、全然鈍くなってて。それで、一番ね、今でも覚えているんだけど、やっと試合に出れるまで回復したんですよ。
 で、練習試合に出て、最初のキックオフでボクんとこボールが飛んできたんですよ。それで、ボク、「キックオフリターン」っていうの得意だったんですよ。ボールがキックされてポーンと飛んでくるでしょ、それでナンバー8の位置にいるボクが取る、と。そこで、飛び出してくる相手の選手をフォフォって(身体を左右に、ステップをきる仕草をする)かわして抜いていくの。
 そしたら(笑)、いつものようにフフって(同)やろうとしたら、身体が動かないんですよ。そればかりか、フフって(同)やっているつもりが、相手からドーンとタックルされて(ヒザにタックルを受けた仕草)、ケガした同じところに入られて、で、退場したのかな、その試合。

――キックオフ直後に?

 そう。だからもう、ボクはナンバー8としては使い物にならない、ということじゃないんですか(笑)。

――そんなことぐらいで使い物にならなかったら、使い物にならないナンバー8は山ほどいることになるじゃないですか

 (笑)

――というより、FWの中で使い物にならなければ、プロップにされるということで、つまりプロップは使い物にならないモノの集まりだ、ということになりませんか?

 (笑)

――それは、監督の指示?

 そう。当時の監督は木本さんだね。
 ですから、そのあとケガから復帰したら、プロップになったんですよ(笑)。

――何番を?

 1番。

――ショックでしたか?

 ショックですよ、そりゃ(笑)。
 ナンバー8がこれくらい(左の手のひらをテーブルの上50cmの高さに掲げる)だとしたら、プロップなんてこのくらい(右の手のひらを同様に10cm)ですからね、当時のボクの意識の中では(笑)。

(つづく)

上井草タタミ(かみいぐさたたみ)=別名:府中四六蔵)
1966年長崎県佐世保市生まれ。長崎海星高校、早稲田大学卒。高校入学から大学卒業まで11年もかけた慎重派。学生時代からフリーライターとして週刊誌や月刊誌で活動を始める。専門は日本の政治と経済と社会と文化。
サントリー・サンゴリアスのHPで「プロップマガジン」を執筆。
「仕事が入った」と家族に偽って土曜日日曜日祝日その他にラグビーを観戦し執筆するのもそろそろ限界かな、と最近感じている本人と騙されてるふりをしている家族(主に妻)である。

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