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楕円球コラム 〜Extra〜

■プロップマガジンW
Vol.6 復活するは我にあり(2)

 昨シーズンまで早稲田大学ラグビー部のスクラムコーチだった佐藤友重さん(32)は、リコーのグラウンドで現在、トップリーグ開幕に向けて淡々とトレーニングを重ねている。

 さすがはベテランである。
 もちろん、プロップである。
 ただのベテランのプロップではない。
 32歳でトップリーガーとして復活する、見上げた男なのである。

今回は、そんな男・友重インタビューの第2弾。

――で、高校入って、大学で早稲田、ワールドと入られるんですけども。どうして早稲田だったんですか

 早稲田は、ちょうど2年の夏に、オファーと言いますか声をかけていただいて。ちょうどその当時、秋田工業の校長先生でラグビー部の象徴的存在というか、秋田工業を十何回も優勝させた指導者の方が早稲田のOBだったんです。その方がいろいろ声をかけていただいて、早稲田のOB会に話をしていただいたといいますか。で、早稲田大学のプレーを見て、早稲田にいきたいなと思いました。

――早稲田のプロップと明治のプロップとどう違うんですか

  早稲田のプロップは、走るっていうイメージがあった。早稲田はプロップも球を持って走る。
 今のラグビーって、プロップでもパスしたりするじゃないですか。昔は本当、プロップなんてもう、スクラム組んでポイント突っ込んで終わりだったみたいなところがあったんです。早稲田のプロップっていうのは、走って、もらって、パスするみたいなイメージがあった。そういう意味では、明治はもう、いわゆるスクラムに懸けてるようなところがあったじゃないですか

――そうですね

 はい。なので、ある意味もう、何ていいますかね、紫紺のジャージとスクラムっていうのは、僕らからして見れば格好良かったですけどね。カリスマ性があるというか。

――でも、頭の隅にはその「牛」の姿?

 ありましたね(笑)。

――でも、フォワードの選手は、フォワードの強いチームを選ぶのかなと思ったら……

 高1あたりまでは、やっぱり明治に行きたかったです。あの紫紺のジャージがやっぱり格好いいなと。大西一平さんがキャプテンの明治。見てたら、明治の前というのはすごい。僕がしびれたところなんです。秋田工業の中でも「おまえはもう明治しかねえな」みたいなことを言われてたんですよ。で、早稲田から掛かった。「いや、でも、行けるわけないでしょう」みたいなのが心の中であったので、まあ。

――でも、早稲田に決まった。で、早稲田では相当やっぱり走るプロップを求められたんですか?

 そうですね。自分は体力的には自信があったので、そこら辺は気にしてませんでした。それよりも、あまりにも周り(バックス)が華麗すぎて、それには付いていけなかった(笑)

――同期はどなたですか

 同期は増保ですね。神鋼の増保と1年から一緒にやったんですけど。

――プロップやってて良かったことっていうのは、どういうものがありますか。

 良かったことですか。

――ええ

 そうですね、良かったこと……。

――じゃ、嫌な思い出から聞きましょう、「プロップマガジン」ですから

 まず、ポジション練習ってあるんですけど、やることが本当にもう限られてるんですよね。例えば姿勢であるとか、あと、多分、伊藤雄大とか諸岡省吾が言ったと思うんですけど、突っ込みってあるんですけど、突っ込みをやるんです。あと、カメみたいなものですね。ほんと、それぐらいなんですよ(笑)。
 ほんと、それぐらいです。それを反復練習して、もうほんとに、暑い日とか汗だらだらになりながら。あごからもポタポタ汗が落ちてくるわけです。僕たちは、ゴールからゴールまでとか、1往復とか、ひどいOBが来たときは2往復とかやったりするわけです。

――カメを?

 カメをです。今の早稲田の学生とかに言ったら「うそでしょう?」っていうぐらいな量をやってた。それを、すべての全体練習が終わってからですね。本当に疲れてるときに「まだやんのか」みたいな。

――早稲田って、死ぬほどランパスをやらせられたわけですよね

 そうです。そのあとに、姿勢(とる練習)だったら、背中に人が載って……。僕は早稲田でもさせてるんですけど。でも、やっぱり諸岡とかはそれで強くなったんで。

――スクラムの姿勢を取って、その上に人が載るわけですね

 はい。腰の上に載るんですよ。お尻のちょうど上ぐらいですね。

――試合中に何かこう、「ああ、やっぱりプロップじゃなくてほかの所がいいな」と思ったことはあります?

 3列とかですね。フォワードで言えばフランカー。

――やっぱりプロップじゃ目立たないからっていうことですか。それとも、きついっていうことですか。それとも、華麗じゃないから?

 目立たないですね。よく「縁の下の、縁の下の」って言われてますね。まさにそうなんです。まあ、でも、ポイントに突っ込まなければ、ライン参加してれば、それなりに目立つんですけど。伊藤雄大みたいにですね(笑)。

――でも、伊藤雄大みたいにボールを持ったら笑われるとか、そういうのはなかったですか(笑)

 ありますよ。社会人の時よくあったんですけど、そばにスタンドオフがいなくてね、ラインアウトでどうしようもないボールを僕にパス来るわけですよ。何で俺にパスするんだよって。ワールド対神戸製鋼だったんですけど、タッチキック蹴ったら、真横にがーんと(笑)。で、あとからビデオ見たら、やっぱり僕はプロップですね。当時、キックには自信があったんですけど。プレッシャーが掛かったら蹴れないっていう(笑)。

上井草タタミ(かみいぐさたたみ)=別名:府中四六蔵)
1966年長崎県佐世保市生まれ。長崎海星高校、早稲田大学卒。高校入学から大学卒業まで11年もかけた慎重派。学生時代からフリーライターとして週刊誌や月刊誌で活動を始める。専門は日本の政治と経済と社会と文化。
サントリー・サンゴリアスのHPで「プロップマガジン」を執筆。
「仕事が入った」と家族に偽って土曜日日曜日祝日その他にラグビーを観戦し執筆するのもそろそろ限界かな、と最近感じている本人と騙されてるふりをしている家族(主に妻)である。

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